『衣擦れ』-ある文筆家の執筆-

全てのものには賞味期限があるという

 

蜂蜜は腐らないという

 

黄金色の甘いこの気持ちには賞味期限があるのだろうか

 

余分なものを全て蒸発させたら 永遠に期限のこない気持ちがつくれるはずだ

 

僕はアルケミストになれるはず 

 

募る想いと親密なうつわ

 

時間という ちり を積もらせないよう

 

そっとおく

 

大切にしまっておきたい気持ちを味わうためにながい時間が要る

 

衣擦れの音が次の仕草を相づちする

 

取り出すうつわに音はなく

 

まるで気持ちをそっと取り出したかのうな

 

動かぬ空気  白い肌  滲んだ虹色の光

 

恋に落ちた 

 

いつものようにここにとどまってたら 眠れそうにないので

 

鼓動が早いのを 旅のせいにしたくて

 

足が軽いのを  旅のせいしたくて

 

一人 旅に出る

 

朝もやに新緑の山裾を   若草色の葉を一枚

 

この色を届けたくて

 

旅の道のりを届けたくて

 

筆を執る

 

 

夜がきた 星を見ようと思った 

 

続ける事が大切だよ と教わった

 

遠い日の記憶

 

 

思い出した

 

 

もう一日 旅を続けようと思った


星 月 流れる雲 

 

 

夜半まで降っていた雨  

 

少し名残を残す 湿り気を含んだ土 しずくをまとう草

 

厚く垂れている雲のせいで

 

風もない 音もない 聞こえてくるのは鳥の声

 

山鳩 雀 いつになく静かに始まった朝

 

何も約束されていない時間

 

何よりも上質なものだと思う

 

遠くて近い  近くて遠い

 

昨日までが  明日からが  今日がつないでくれる

 

その瞬間が連続していく       流れる

 

今の僕には両方を望むことは出来ない

 

どちらか一方を差し伸べられたら 選択しよう 

 

二つは切り離せない 引き裂くとひずみを生じてしまう

 

きっと

 

そのことも知っている    ただ、ほんの少しだけの差異

 

それが救い   想像力だけが 今を生み出す

 

それを学ぼうとしているのです                

 

 

 

『衣擦れ』