『ある文筆家のくらし。』エピローグ

そうこうしているうちに彼は逗留生活を終え

 

再び下駄に軽い音をまといもと来た道を ゆらりと曲がっていった

 

 

  彼はここ数日で 思った

 

 

いつもの場所で いつもと違う事を いつもと違う場所で いつもの事を

 

 

日常と非日常のふとした接点に気付く事

 

そういうことが文筆家のくらしなんだと

 

 

 その接点はもしかすると ほんとに些細な事なのかもしれない

 

ほんとうは接点すらも 存在していないのではないか

 

ただ流れる時間だけがあり、移ろいの中に身を置くそれぞれの視点が存在し

 

その交錯する所に接点が映し出されているように見えているだけだと

 

そのあたりまで考えたところで

 

これもまた移ろいの中の出来事に過ぎないと感じ

 

彼はいつものように あふれる言葉の海に旅に出かけていきました。

 

彼は しばらくして、自宅でも気まぐれに庭を見ながら

 

箱膳で食事をするようになりました。

 

スイッチを入れるのは きっと 猫ではなく 私だと

 

不服そうな顔でこちらを見る猫を撫でながら

 

今日の御味御汁のできに満足そうな表情を浮かべた