『ある文筆家の暮らし』 no.逗留記 二

気がつけば

 

はや文机の前に腰を下ろしている自分がいる

 

 

なんとも 困ったものだ

 

 

開け放つ窓から窓へと吹抜ける風は

 

新緑の緑をつれてそのさきには

 

過去の記憶とこれからの出来事がつまっている

 

 

 

やはり 散策が先だ

 

しばらくは逗留する事に決めているんだから
 

 

 

 

 

 

下駄を履こうとした左頬に揺れるものを感じる

 

はたと 立ち止まる
 

 

下駄を脱ぐときには気付かなかった

 

きっと女将さんだ そうにちがいない
 

 

野山の一部をきりとってそこに

 

さりげなく置いて来たかのような
 

 

そんな 光景が ふっと浮かんでいる

 

 

刹那 まさに心をもってかれたような

 

もはや下駄を履くのも すっかり抜け落ちている

 

 


ああ、きっとこれはそのはず  きっとそうだ

 

僕が名前を付けても さほど問題はないだろう
 

 

僕は 草枕 と名付けて 我に返りようやく

 

下駄を履く事を思い出した

 

 

 

まだまだ外は明るい