『ある文筆家の暮らし』 no.逗留記 一

のれんが少し揺れる

 

奥からそよぐ風に期待で頬が少し緩む 

 

昂揚を押さえるように 

 

右足の下駄は敷居をまたぐ
 

 

格子戸の向こうから 

 

ちらと動く帯の色に旅を感じずにはいられない

 

 

通され 襖をすっと滑らせると
 

 

静かな空気に引き寄せられ 

 

床の間にたたずむ白い空間にはっとする
 

 

すでに言葉の筆が墨を含んで

 

踊りだそうとしているのがわかる

 

 


まいった、

 

今日は界隈の散策をすると決め込んでいたのだが。

 


女将の足袋が床を滑っていく気配はとうに消えている

 


さて、外の景色でも眺めて。。。

 

横目に写る文机が少しだけ憎らしい