『ある文筆家の暮らし』 no.日記 三

二〇一一年 五月 八日

 

やはり、今年の春こそは、と思うだけでは始まらない。

 

あそこならきっと呼吸をするように言葉が躍り出てくるはずだ

 

友人を見送ったらさっそく出かけよう。

 

 

 

こうして、彼はかつての文豪たちがしたように、

 

逗留しながらの執筆活動に憧れを抱き

 

のれんをくぐった事はないが、

 

きっと自分の理想を満足させるであろう

 

あの旅館をめざし旅にでるのであった。

 

彼の足取りはいつもと変わらないが、

 

少し乾いた 土の上に残った下駄の音は軽やかに響いていた。